2018年01月28日
児孫のために美田を買わず

「児孫(じそん)のために 美田(びでん)を買わず」
西郷さんの有名な西郷語録のひとつ、この言葉の生まれたいきさつをご紹介します。
ある時、西郷さんのお供をしていた小田伝兵衛と言う人が、西郷さんの糸子夫人に耳寄りな話を持ってきました。
「川辺の一等地にある田んぼが、今売りに出ちょるそうで、誰か買い手がなかか、探しちょいやっそうごあんど」
この話は、とてもいい話だったので糸子夫人は早速、西郷さんに聞いてみました。西郷さんは、しばらくだまって奥さんの話を聞いていましたが、突然、
「うちで、いっばん(一番)、馬鹿はだい(誰)か?」
「は? ばか?」
あまりにとっぴな質問に、奥さんは答えようもありません。西郷さんは、さらに、
「どん子が、タマシ(魂)が、はいっちょらんか(入ってないか)?」
奥さんの方は、
「変なことを言うちょいやしな〜(言っておられるなぁ)」
と首をかしげるばかりです。
西郷さんは、やがて居住まいを正して、静かに口を開きました。
「自分は今、遊んでいる。けれども何不自由なしに、こんな暮らしができるのは、いったい、だれのご恩だと思っちょっか。みんな人民の頭にかかった税金をもらって、生活しちょったっど(生活しているんだぞ)。自分の家に馬鹿息子が入れば、あるいは田んぼも買わんなならん。魂の入らん子供がおれば、あるいは畠も買っておかんとならんかも知れん。しかし幸いなことには、人並みの子供が生まれているから、そげん、よけいな心配をする必要がなか。成長したら、めいめいが、それぞれに自活の道を立てていくじゃろう」
これが、『児孫のために美田を買わず』の精神です。
この言葉通り、西郷さんの子供たち四男一女は、若くして亡くなった三男をのぞいて、それぞれに大成しました。
現代の人たちにも充分通じる、西郷さんらしい言葉です。
「歌之助のボッケモン」より
Posted by のりP(顔は本人ではありません) at 11:31│Comments(0)